第52回

第52回MURオープンゼミナール

日 時

内 容

場 所

2002年 5月11日(土曜日) 午後1時30分~3時

再び「阪神・淡路大震災犠牲者 聞き語り調査」について

-聞き語り調査の意義と課題- 室崎益輝

神戸大学工学部LR104教室

再び「阪神・淡路大震災犠牲者 聞き語り調査」について

-聞き語り調査の意義と課題- 室崎益輝

■なぜ、この調査をやりはじめたか

3つの出会い

寺田寅彦 事実を科学的に残す

柳田邦男もしくは北野武 「六千四百人が一緒に死んだのではない。ひとりひとりがそれぞれに死んだ事件が六千四百件起きたのだ」

一人の被災者 火災についての調査報告会の時 「一人一人のアンケートに必死に書いたことが、数字に反映されるだけですか」

人的被害研究会を1年やったが、一人一人の調査に踏み出せない。アンケート的な調査ばかり。アンケート調査は、安易な方法、結果は数字でしか表現されない。

■調査の意義と目的

すべては再発防止への警鐘

伝承 災害の苦しさ・悲惨さを伝える

究明 原罪の根源をさぐる 表面的な事象をとらえることではない

(原罪:人間のおろかさ、おもいあがり)

一つ一つの事実を残す必要がある

供養 亡くなった人の悔しい思いを伝えたい

遺族の方々の心に応える

■記録と伝承のあり方

研究論文にしない 個人の取り組みにしない

こちらの都合で記録を残すことはさける

→ 証言者の思いの中に真実をみつける

いまの価値観でみない 記録者の恣意性を排除

→ たんたんと記録をのこす

「場」を背景として真実をみつめる

(場:個人の歴史、地域の条件など)

体験を共有することで真実をさぐる

(信頼関係のなかで真実が浮かび上がる)

震災を体験していない記録者の場合、難しい面がある

社会のためとわりきって、自信をもって調査をする

■原因の究明と共有

究明について不十分な記録とならないようには、注意している

地域的要因(市街化のプロセス、コミュニティ)

建築的要因(メンテナンス、使い方(間取り、家具))

個人的要因(生い立ち、しごと、趣味)

社会的要因

歴史的要因(歴史をさかのぼって現在をみる)

■調査体制・課題

これまでの調査

研究室のメンバー+外部調査団体

震災記念協会から実費援助

作成した冊子の提供(遺族の了承のあるもの)

(人と防災未来センター2階資料室に14冊、プライバシーに配慮)

地域プロジェクトで調査を行ってきた。

(人と人のつながりで紹介してもらって、調査を行う。)

1998 1999 2000 2001

68人 100人 100人 30人 の調査を行った。

暗礁にのりかかりつつある。

理由

遺族の所在がわからなくなる。「いまさら思い出したくない。」

方向

調査に協力してもらう人をどのように広げるかを考えたい。

調査で何を得られるかを考え、フォローアップする。

震災について明らかにすべき事実

わからないことが山のようにある 震災後10年までに

<議論>

被災者への心理的な影響をどのように考えるのか。

→ 一方で、悲惨なことを伝えないといけない。

記録者をどのように広げるか。

→ 記録者のケアをする必要がある

→ 調査対象者をいかに広げるかがむしろ課題となっている

(以上、記録 北後)

連絡先:神戸大学室崎・北後研究室

TEL 078-803-6009 または 078-803-6440

MURオープンゼミナールは、広く社会に研究室の活動を公開することを企図して、毎月1回、原則として第1土曜日に開催しているものです。研究室のメンバーが出席するとともに、卒業生、自治体の都市・建築・消防関係の職員、コンサルタントのスタッフ、都市や建築の安全に関心のある市民等が参加されています。興味と時間のある方は遠慮なくご参加下さい。

Last Updated 10/05/2019 13:48:18